<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第六章【エンシュー今川焼】vol.12

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今川義忠(いまがわよしただ)は、すでに、いやそれ以前からエンシュー奪還のみに
心を突き動かされていた。
これは当家の切願であり仕方がない事であるが、それにしても何かに憑りつかれている
様な、そんな面持ちである。
その思いを正規の形式を守らず、今川にとって不逞の輩をこのエンシューから排除し力
を見せつける事によって この地の豪族達が自分の方になびくのだと本気で考えていた。
その人柱的存在が、狩野氏であり、勝間田氏であり、今また横地氏を喰らわんとしている。
脅威!それを植え付けんと今川勢は野を焼き畑を荒らし寺も打ち壊して進んだ。
農民たちは恐れおののき震えるばかりである。
それを見た義忠は「ニヤリ」と笑みを浮かべたが、実際は彼の思い通りにはなっていなかった。
エンシューの北東側の豪族たちは今川の進行を認めた形になったが、他の豪族は反逆者と
して冷ややかな目でしかない。
この戦の当事者たちは、それにも増し憎悪が全てを包んだ。
横地氏と懇意である二俣氏もこの戦いに加わったが小さき力では対抗できず退かざるを得なかったが、
その憎しみはきえる
そして異を唱えるのは、外ばかりではなかった。
義忠の異様な行動に今川勢内部でも疑問と不満の声がチラホラ上がるようになっていた。
そういった周囲の状況を気に留めず、義忠は走り続けた。
状況を俯瞰で見る事が出来ない時ほど怖いものは無い。
現に山裾の茂みに潜んでいた横地勢を今川勢は見つける事もなく、その前を横切ろうとしていた。
「放てー!」
その号令と共に数百名から放たれた弓矢が今川勢に降り注いだ。
気づいたときにはもはや遅く、ただただ降り注ぐ弓矢から身を隠すことに精一杯だった。
この状況に義忠は発狂した。
「何をやっておる!!早くあの者達を薙ぎ払え!!!」
今川勢が怒号と共に横地勢に襲いかかる。 
「怯むな!迎え撃てー!!!」
横地勢も負けじとそれに立ち向かう。
奇襲が成功した横地勢は勢いに乗り、逆に今川勢は浮足立っていたが、数に勝る今川勢が徐々に
態勢を立て直し押し返しを計っていった。
「皆退けー。」
これ以上抑える事の出来ない横地勢は城への退去を余儀なくされた。
しかしながらこれは、今川勢、今川義忠の愚行であり、初めてにして最大の苦道を強いられたことになる。 

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