2018年08月30日11:48
<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第七章【今からシバいたる】vol.3≫
カテゴリー │歴史が動いてヒストリ庵
二俣郷の山の中、父が亡くなり新たに当主に就いていた二俣近江守昌長(ふたまたおうみのかみまさなが)
スルガより遠いこの地、今川家の風を受けることなく穏やかである。
その中で昌長(まさなが)は領民が住みよい土地にする為、この地の発展に力を注いでいた。
(この地は要だ。信濃(しなの)や甲斐(かい)へ抜ける道はエンシューでここが一番の抜け道である。)
代々受け継がれてきたこの土地の重要性を昌長(まさなが)は気づいていたが
今はまだこの地がさほど重要でないほど風や水や時間は静かに流れて進んでいる。
ある日の事、小姓(こしょう)がある事をこぼした。
「東が何やらキナ臭いと耳にしました。」
「キナ臭いとな。それはなんぞや。」
「先日、義忠(よしただ)殿の忘れ形見、龍王丸様が諱(いみな)を 氏親(うじちか)と名乗られ元服したとか。」
「して、かの者は小鹿(おしか)殿によって幽閉されているはずでは。」
「それが、京より早雲(そううん)殿を招へいして、小鹿(おしか)殿を討伐し、瞬く間にスルガを掌握した様にございます。
それに付随してかはわかりませぬが、東の豪族の方々が今川方になびいているとか。」
『あの今川の輩を許してはならぬ!』
昌長(まさなが)の耳にどこからか父上の声が飛び込む。
ふぅ~と息をこぼすと
「あの家は、どうしてもこのエンシューを我が物にと欲しているのだな。
この事、早急に斯波殿にお伝えせよ。すでに今川のエンシュー侵攻が始まっていると。」
「承知いたしました。」
昌長(まさなが)は何か言い知れぬ不安を感じていた。
傍若無人ですべてを薙ぎ払うのが今川の家風と聞いていたが、それとは違う状況に彼は不安を感じた。
(元服した新しき当主はまだ若いはず、その若さで一瞬のうちに物事を治められるか。。。それとも
招へいしたという早雲という者、名は知るが、その者の辣腕が達者であるのか。。。。
どちらにせよ、早急に手を打たねばスルガの様に一瞬で事が済んでしまうかもしれぬ。
それに、もしそのような手練れであれば、この二俣の地の存在を知られるわけにはいかぬ。
知られたならば、きっとこの地は重要な軍略地になるだろうて。。。。)
彼の頭の中で、ぐるぐると思惑が浮沈する。
氏親(うじちか)も早雲(そううん)も両名揃って近年稀にみる辣腕の持ち主であるが、彼はまだ知る由もない。
それでも当たらずとも遠からず、その恐怖が不安を掻き立てていたのかもしれない。
二俣近江守昌長(ふたまたおうみのかみまさなが)は、二俣を相手に見せる事は良しとせず
天竜川のほとりに位置する杜山の城に籠る事とし、斯波勢に後詰として二俣で布陣してもらう算段を建てた。
しかしながら危機たる書状を何通も送るも、越前の平定に忙しいのか今川を甘く見ているのか、
返ってくる言葉は、「警戒せよ。」の一言ばかりであった。
幾つの歳月をかけたか、稲穂が垂れコオロギが秋の訪れをさえずる季節。
その風情を切り裂くように、伝令が慌てて駆け込んでくる。
「懸川の城が奇襲、奪取されたよしにございます。」
スルガより遠いこの地、今川家の風を受けることなく穏やかである。
その中で昌長(まさなが)は領民が住みよい土地にする為、この地の発展に力を注いでいた。
(この地は要だ。信濃(しなの)や甲斐(かい)へ抜ける道はエンシューでここが一番の抜け道である。)
代々受け継がれてきたこの土地の重要性を昌長(まさなが)は気づいていたが
今はまだこの地がさほど重要でないほど風や水や時間は静かに流れて進んでいる。
ある日の事、小姓(こしょう)がある事をこぼした。
「東が何やらキナ臭いと耳にしました。」
「キナ臭いとな。それはなんぞや。」
「先日、義忠(よしただ)殿の忘れ形見、龍王丸様が諱(いみな)を 氏親(うじちか)と名乗られ元服したとか。」
「して、かの者は小鹿(おしか)殿によって幽閉されているはずでは。」
「それが、京より早雲(そううん)殿を招へいして、小鹿(おしか)殿を討伐し、瞬く間にスルガを掌握した様にございます。
それに付随してかはわかりませぬが、東の豪族の方々が今川方になびいているとか。」
『あの今川の輩を許してはならぬ!』
昌長(まさなが)の耳にどこからか父上の声が飛び込む。
ふぅ~と息をこぼすと
「あの家は、どうしてもこのエンシューを我が物にと欲しているのだな。
この事、早急に斯波殿にお伝えせよ。すでに今川のエンシュー侵攻が始まっていると。」
「承知いたしました。」
昌長(まさなが)は何か言い知れぬ不安を感じていた。
傍若無人ですべてを薙ぎ払うのが今川の家風と聞いていたが、それとは違う状況に彼は不安を感じた。
(元服した新しき当主はまだ若いはず、その若さで一瞬のうちに物事を治められるか。。。それとも
招へいしたという早雲という者、名は知るが、その者の辣腕が達者であるのか。。。。
どちらにせよ、早急に手を打たねばスルガの様に一瞬で事が済んでしまうかもしれぬ。
それに、もしそのような手練れであれば、この二俣の地の存在を知られるわけにはいかぬ。
知られたならば、きっとこの地は重要な軍略地になるだろうて。。。。)
彼の頭の中で、ぐるぐると思惑が浮沈する。
氏親(うじちか)も早雲(そううん)も両名揃って近年稀にみる辣腕の持ち主であるが、彼はまだ知る由もない。
それでも当たらずとも遠からず、その恐怖が不安を掻き立てていたのかもしれない。
二俣近江守昌長(ふたまたおうみのかみまさなが)は、二俣を相手に見せる事は良しとせず
天竜川のほとりに位置する杜山の城に籠る事とし、斯波勢に後詰として二俣で布陣してもらう算段を建てた。
しかしながら危機たる書状を何通も送るも、越前の平定に忙しいのか今川を甘く見ているのか、
返ってくる言葉は、「警戒せよ。」の一言ばかりであった。
幾つの歳月をかけたか、稲穂が垂れコオロギが秋の訪れをさえずる季節。
その風情を切り裂くように、伝令が慌てて駆け込んでくる。
「懸川の城が奇襲、奪取されたよしにございます。」