2018年03月30日10:20
<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第六章【エンシュー今川焼】vol.10≫
カテゴリー │歴史が動いてヒストリ庵
勝間田修理亮 ( かつまたしゅりのすけ )は自分が生まれたこの地、
勝間田城(かつまたじょう)を死出の出発点と定めた。
家臣達も同じで、今までの今川家の猛攻を目の当たりにすれば、
死ぬ気でないと一縷の光も得られないと感じていた。
勝間田城は小さな城ではあるが、牧ノ原台地のある程度切り立った裾に位置しており、
脇から登る事は困難である。それに登城する道は一本しかない。
城内はその道に沿って、三ノ曲輪、二ノ曲輪と突き進めば本曲輪にたどり着ける階段方式の城である。
攻略する事に手こずる城だが、守る方も逃げ道が無いゆえ諸刃の剣とも言える。
今川義忠(いまがわよしただ)が、城の眼下に布陣すると軍配を高らかにあげ皆に一斉攻撃を命じた。
「何も残すな!全てをなぎ倒せ!全てを焼き尽くせ!」
おぉー!!!
義忠の命に呼応した配下の者達が逆流した津波の如くどっと城の入り口を目指して駆け上っていく。
上からは弓矢が降り注ぐが構ってなどいられない。そこにとどまっていた方が死ぬからだ。
眼下に見えた圧倒的軍勢も、余裕とは程遠く前線は文字通り必死の形相で勝間田を討たんとしている。
それはあたかも、鬼と鬼がその形相で対峙しているかのようだった。
今川勢の大半が最初の三ノ曲輪に近づくと、そこで一旦隊列を組み直し始める。
苦しくも今川勢がいる場所は勝間田勢の死角であり、弓矢が当たらない。
地響きが起きそうな戦場に一時の静寂が訪れた。
しかし、両勢とも相手の次の一手がどう来るのかと固唾を呑みこんでおり
空気は動くと刺さりそうなほど鋭くとがっていた。
どれくらいの時間が経ったか、勝間田勢の見張りが様子を伺い外をチラッと見た時。
ビューっという音と共に後ろの矢盾に当たった。
「火矢だぁーー!!」
兵が声を荒らげると、その瞬間、いくつものトっトっトっという音がした。
無数の火矢が防護壁や矢盾に当たる音である。
この頃はまだ漆喰の壁だどというものは波及しておらず火に弱い全てが木材である。
たちまち三ノ曲輪の柵や壁、門が炎に包まれた。炎は留まることを知らず蔵や仮住居まで飛び火する。
たまらず兵達は二ノ曲輪に逃げ押し寄せる。
あまりの火の周りの速さと、備蓄も焼けてしまった喪失感に勝間田勢は戦意消失した。
これではもう戦えない。
それでも今川勢は全てを無にしようと襲いかかろうとしている。
が、その時本曲輪の方が何やら騒がしくなった。
「今川の者よ!我が勝間田修理亮の首をくれてやるゆえ、この者達を許してはくれんか!」
「殿ぉー!」「殿ぉー!」
このまま争っていては、皆討死は必須。
そう思い勝間田修理亮 ( かつまたしゅりのすけ )が今川勢に投降しようと言うのだ。
それを家臣たちがなだめている。
ただ家臣達、兵士たちもどこかで安堵の気持ちもあった。
修理亮の願いは届けられ、彼は義忠の前に投降した。
「修理亮殿ぉ、我に歯向かうとは、良い度胸をしておられますな。」
「儂の命はくれてやる、だが皆の命は助けてくれ。」
「良いですとも、ただし刀を捨てて野に返るがよろし。」
こうして、修理亮が斬首されることでこの勝間田での戦いは幕を閉じたのだった。
「ははははは、次は横地の烏滸者(おこもの)よ。」
燃える勝間田城に義忠の甲高い笑いが悔し涙をこらえる気持ちをのせて消えていった。

勝間田城(かつまたじょう)を死出の出発点と定めた。
家臣達も同じで、今までの今川家の猛攻を目の当たりにすれば、
死ぬ気でないと一縷の光も得られないと感じていた。
勝間田城は小さな城ではあるが、牧ノ原台地のある程度切り立った裾に位置しており、
脇から登る事は困難である。それに登城する道は一本しかない。
城内はその道に沿って、三ノ曲輪、二ノ曲輪と突き進めば本曲輪にたどり着ける階段方式の城である。
攻略する事に手こずる城だが、守る方も逃げ道が無いゆえ諸刃の剣とも言える。
今川義忠(いまがわよしただ)が、城の眼下に布陣すると軍配を高らかにあげ皆に一斉攻撃を命じた。
「何も残すな!全てをなぎ倒せ!全てを焼き尽くせ!」
おぉー!!!
義忠の命に呼応した配下の者達が逆流した津波の如くどっと城の入り口を目指して駆け上っていく。
上からは弓矢が降り注ぐが構ってなどいられない。そこにとどまっていた方が死ぬからだ。
眼下に見えた圧倒的軍勢も、余裕とは程遠く前線は文字通り必死の形相で勝間田を討たんとしている。
それはあたかも、鬼と鬼がその形相で対峙しているかのようだった。
今川勢の大半が最初の三ノ曲輪に近づくと、そこで一旦隊列を組み直し始める。
苦しくも今川勢がいる場所は勝間田勢の死角であり、弓矢が当たらない。
地響きが起きそうな戦場に一時の静寂が訪れた。
しかし、両勢とも相手の次の一手がどう来るのかと固唾を呑みこんでおり
空気は動くと刺さりそうなほど鋭くとがっていた。
どれくらいの時間が経ったか、勝間田勢の見張りが様子を伺い外をチラッと見た時。
ビューっという音と共に後ろの矢盾に当たった。
「火矢だぁーー!!」
兵が声を荒らげると、その瞬間、いくつものトっトっトっという音がした。
無数の火矢が防護壁や矢盾に当たる音である。
この頃はまだ漆喰の壁だどというものは波及しておらず火に弱い全てが木材である。
たちまち三ノ曲輪の柵や壁、門が炎に包まれた。炎は留まることを知らず蔵や仮住居まで飛び火する。
たまらず兵達は二ノ曲輪に逃げ押し寄せる。
あまりの火の周りの速さと、備蓄も焼けてしまった喪失感に勝間田勢は戦意消失した。
これではもう戦えない。
それでも今川勢は全てを無にしようと襲いかかろうとしている。
が、その時本曲輪の方が何やら騒がしくなった。
「今川の者よ!我が勝間田修理亮の首をくれてやるゆえ、この者達を許してはくれんか!」
「殿ぉー!」「殿ぉー!」
このまま争っていては、皆討死は必須。
そう思い勝間田修理亮 ( かつまたしゅりのすけ )が今川勢に投降しようと言うのだ。
それを家臣たちがなだめている。
ただ家臣達、兵士たちもどこかで安堵の気持ちもあった。
修理亮の願いは届けられ、彼は義忠の前に投降した。
「修理亮殿ぉ、我に歯向かうとは、良い度胸をしておられますな。」
「儂の命はくれてやる、だが皆の命は助けてくれ。」
「良いですとも、ただし刀を捨てて野に返るがよろし。」
こうして、修理亮が斬首されることでこの勝間田での戦いは幕を閉じたのだった。
「ははははは、次は横地の烏滸者(おこもの)よ。」
燃える勝間田城に義忠の甲高い笑いが悔し涙をこらえる気持ちをのせて消えていった。
