<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第六章【エンシュー今川焼】vol.7

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はたして、想いは今川義忠(いまがわよしただ)の通りになっているのだろうか。
ついに幕府から堀越貞延(ほりこし さだのぶ)の退去命令が下った。
義忠は悔しさを滲ませ、貞延に対しスルガへの帰還を命じた。
もちろん貞延はそれに応じ東海道を東上する。
そして佐夜ノ中山に至る時、坂の上に武装した武士団を見つける。
はじめ彼は義忠の「よくやった。」という意味合いで中山まで兵を出張ってくれているのだと思っていた。
しかし近づくにつれそれが今川の兵ではない事がわかった。
(どこの兵であろうか。。。ここで何をしておるのか。。。)
堀越貞延(ほりこし さだのぶ)の頭の中には疑問しか浮かばない。
「待たれよ、ここで待たれよ!この一団は堀越殿の軍とお見受けしたが相違ないか?」
「いかにも我は、堀越貞延である。おの方達はどこぞの兵か?」
すると兵団の後ろの方から2人の武将が現れた。  
「我は横地秀長(よこちひでなが)。」
「我は勝間田修理亮 ( かつまたしゅりのすけ )。」
そうあのエンシュー重鎮、横地氏と勝間田氏である。
彼らは遠州守護・斯波 義廉(しば よしかど)の命で堀越貞延を討たんと待ち構えていたのである。
「これはこれは、横地殿、勝間田殿、狩野氏の討伐依頼でございますな。お久しゅうございますな。
で、これはどういった事なのでございましょうや。」
貞延はまだ彼らが自分を討たんとしていることを知らない。
そればかりか、悪しき斯波氏をこのエンシューから排除せん為に死力している英雄気取りなのである。
「このうつけが!逆賊の者よ!守護職斯波様の命によりお主らを討ち取らせてもらう!覚悟せい!」
そう言うと、横地・勝間田両軍は、刀を抜き槍を貞延の軍に向けた。明らかなる殺意である。
突然の事に混乱し動揺する堀越貞延(ほりこし さだのぶ)と兵達。 
貞延が弁明する余地もなく両軍が襲い掛かってきた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スルガ
「殿。」
家臣が急報を受け足早に今川義忠(いまがわよしただ)のもとに参じた。
「なにごとよ?」
「堀越殿、佐夜ノ中山にて横地・勝間田両軍の襲撃に会い、懸川まで退いた模様。 
かの地でも戦は継続され、残念ながら討死。次男の貞基(さだもと)の行方はしれません。」
それを聞いた義忠は、持っていた扇子をぎゅっと握りしめ、ひじ掛けにポンと拍子をとると、高らかに笑い始めた。
「横地・勝間田のあの烏滸者(おこもの)よ。これで大義が成ったわ!貞延嫡男の一秀(かずひで)を呼びよせよ!
弔いの戦である!」
「はっ」
はたして堀越貞延(ほりこし さだのぶ)の死は、義忠の大義を得る布石だったのだろうか。
とにかく再び義忠によるエンシュー侵攻が開始されようとしている。
そしてその様子をふすまの脇から眼光鋭く見ていた4歳になる童氏がいた。

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