<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第五章vol.15【エンシュート!スルガ】

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ひっそり佇む草庵。
そこに満たされた月が闇夜を照らし二人の武将の全容を明かす。
?「話が違う!。」
?「話?・・・何のことだか。私は何もお約束はしておりませんぞ。」
?「次期九州探題の座を約束するからというから、今川殿の付け入りやすい所を貴殿に話をしたのに。」
?「それは少し考え違いをしておられるようですな、我々は共に今川殿の九州での傍若無人にほとほと
愛想がつき、このままでは九州が駄目になってしまう。だから協力して今川殿を表舞台から退かせた。
ただ、それだけの事です。大内殿。」
大内義弘:
「今まで室町殿の為、貴殿の誘いで色々行ってきた。先の少弐討伐の命も完遂したが恩賞ももらえぬ。
そればかりか、室町殿のけしかけで少弐が動いたとも聞く。我が領地も削られるという話まで出ておるそうじゃ。
納得がいかぬ。もしや、斯波殿、貴殿が裏で手を引いているということはあるまいな。」
斯波義将:
「何を戯言をおっしゃいますやら、そのような事は出来ようもない。これは全て室町殿の御意志。
九州探題に渋川殿を任命されたのも、室町殿の御意志でございますゆえ手出しはできませんよ。」
大内義弘:
「うぬぬ、、、、」
大内義弘は、はき出そうになる愚痴を飲み込んだ。納得など出来ようもない。
それよりもあの了俊に心酔していた義弘が今川了俊降ろしの一端を担っていたとは。
彼はすでに了俊よりも多くの権力と領地を保有していた。
そして室町殿たる足利義満に取入りさらなる権力拡大を狙っていた。
古(いにしえ)の家復興である。
九州探題に躍り出て、日の本西側3分の2を有し将軍家と肩を並べる夢を見だしていたが
立ちはだかったのは今川了俊というとても高い壁。自分一人では太刀打ちできはしない。
誰かの手助けを求めていた所に現れたのがあの男、斯波義将なのである。
斯波義将はその野心に付け入ったのだ。
内の敵である大内義弘を得て、了俊降ろしをすんなり熟した義将は、次の作業に取り掛かる。
大内義弘降ろし。
彼にしてみれば身内でもない大内家にこれ以上権力を握られる事は避けたい。
足利義満の守護弱体化の波に乗じて闇に葬り去ろうと考えた。
それにはまず、大内義弘を激高させなければならない。
その為の渋川家九州探題任命。また彼は義満に口添えをしたのだろう。
案の定義弘は激高し斯波義将の所へ抗議に現れたという事である。
義将の前では大内義弘を謀略をかけるなど今川了俊に比べれば他愛のない事。
早々にあしらわれ、うやむやにされ大内義弘は帰っていった。
すべては斯波義将の手の上の出来事だったのだ。
状況を知ってか知らずか、同じ時期、足利義満は大内義弘に京都への上洛を命じた。
だが、彼はそれに応じようとはしなかった。
「我が家の再建まだ夢半ば、この様な事で露と消えるわけにはいかぬわ。」
この頃の大内家は周防・長門・石見・豊前・和泉・紀伊の守護を兼任し、李氏朝鮮や明の貿易の窓口にもなっていた。
今川了俊のやろうとしていた事である。ただ、大内家はその特権を独占し私欲化しつつある。
権力におぼれたものは権力によって倒される。人の常である。
故に義弘は義満を拒んだ。
再三にわたる上洛の命に一度も答える事も無かった。
そして彼は決断する。

~場所は代わってエンシューの地~
半国守護を命じられた今川了俊は、この小さき中で最大限の努力をすることが性に合っていると
今の現状にありがたみを感じ、エンシューの発展に貢献をしていた。
そんな折、一通の便りが届いた。
「室町殿は私利私欲に溺れ、この日の本を混沌へと誘う類なり
なれば我立ち上がり是を討たん。協調する者共に立ち上がりうねりを造られたし。」
あの大内義弘から挙兵を促す便りであった。
了俊は一つ溜息をこぼした。

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