<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第五章vol.11【エンシュート!スルガ】

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管領の細川頼之から突然送られてきた書状。
その内容は、
「皇族を殺したとあっては後100年の恥、現在の混乱を招いたのは懐良親王であり
それを材料として明に懐良親王の国王明記を降ろさせるので戦を長引かせよ。」
と言うお達しであった。
またその手始めに少弐冬資を殺害し混乱を作り、南朝勢を一掃せよという添え書きまでもある。
義を重んじる細川様がこの様な書状を送るはずがないと、了俊が口にした人物『斯波義将』
「義将、斯波義将。あの13歳にして管領職についたという噂の人物ですか?」
弟の仲秋も斯波義将の事を噂ながらには知っている様である。
「話は複雑になるが元々管領職は斯波家が請け負っておったのだが、
それを蹴落としついたのが細川家。そして謀略にて引きずり落とし再び斯波家が管領職を奪い返した。
だが悪政が響き今はまた細川家がその職に就いているが。。。
先のいざこざで細川家と斯波家の間で内紛が起き、父からその処理を仰せ使った際
両家の橋渡しをしたことがあるのだが、片隅にいたのが斯波義将であった。
その目は鋭く何かしらの野望を抱いているかの如くであったのを覚えている。
ほどなくしてあの者が若くして管領になったそうだが、実質動かしていたのは父方であると聞いた。
父親の悪政により降ろされた訳だからもう一度返り咲きたいと思っているに違いないし
鎌倉様(義満)の教育係をしており言葉は細川様より耳に入る。
どこぞで横槍を入れる事も容易であろう。
それに、この九州探題。。。。
自分の前任は渋川のなにがし、、、あれは斯波家の庶家である。
復権を望みたい気が満々としておるの。」
いつの時代も権力というモノは混とんとしている。
「で、兄上この書状いかがいたしますか?」
少し考えた了俊は淡々と答える。
「・・・・・その書状の通りにする。」
「兄上?そこまで解っておきながらなぜ?」
「これはどちらに進んでも棘の道である。これを破棄すれば鎌倉様(義満)に背いた事になり
恩義ある細川様の任命責任と今後の今川家の命運が絶たれる。
逆にこれを実行したとして、九州はまた混乱へ突入するだろう。そこで何か不手際があれば
それはそれで解任の理由になる。。。。
ならば、自分だけがその業を背負い尚且つ小さくとも可能性がある方にかけるのみ。」
「では、、、」
「面目ないが少弐殿には我が今川家の礎となってもらう。」
「、、、、承知しました。ならば、一蓮托生。私が少弐殿殺害を実行いたしましょう。」
「・・・・・わかった。これは死出の旅まで持っていこうぞ。」

こうしてこの事変は起こった。

「お招き誠にありがたき事。」
「ささ、少弐殿そちらに座られよ。」
「これはかたじけない。」
そそくさと席に座ろうとした少弐冬資の背後から、隣部屋に潜んでいた仲秋が羽交い絞め
短刀を突き刺した。
「すまぬ、少弐殿。世の習いじゃ。」
口を押えられた少弐冬資はもごもごと何かを叫び、やがて絶命した。
事を終えた了俊がふと言葉を漏らす。
「自分は、自分の判断はこれで良かったのか、、、、もう何もわからぬ。」
「兄上、私は良きも悪きも兄上についてゆきますゆえ。」
そうして、長い時間静寂が一帯を支配した。


~京都~とある宴の会にて
「へっくっしょい!」
「おぉ、越中殿(義将)風邪でもおひきになられたかな?」
「いやいや、誰かがどこぞで噂話をしているのでしょう。」
「ほほほほ、それは難儀かな。」

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