2016年11月18日09:10
<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第二章vol.9【二岐二俣また明日】≫
カテゴリー │歴史が動いてヒストリ庵
※これはあまりにもフィクションです
※歴史認証はされておらず、あくまで個人の見解です。
五郎太夫は再び二俣に戻る事になった。今度は娘も同行している。
なじみの大谷乃内が数日前に訪れて、弾正から今一度会いたいとの言伝だとか
自分の願いを断っておいて今更何用かとは思ったが、無下にも出来ず今ここにいる。
そんな思いを抱きながら弾正の家に着いたとき、彼は何事かと思った。
鍬や篩(ふるい)の農具はしっかりと整頓してあり、藁ぶきの縁はしっかりと切りそろえられている。
庭においても隅に至るまで手入れが施されていた。
以前来た時とは見違えるほどの変貌ぶりに一瞬言葉を失った。
さらに弾正に呼ばれて家の中に入ればどうだろう。
そこには、ここらの地域ではお目にかかれない織物の正装に身を包んだ彼がいた。
あの、泥だらけで顔の半分を頭巾で覆っていた老人とは思えないほどである。
今でいうギャップ萌えという事になろうか、五郎太夫は大いに驚いた。
そしてこれが京に近き”もののふ”なのだと改めて思った。
「な、何事でございますか?これは。」
「よく来られました五郎太夫殿とその娘方。ささお座りなされ。」
すこし張ったお腹をいたわり、座る二人を見て弾正は心の内を語り始めた。
「私が仕えてきた菅原家というのは、高貴な家でございました。
古(いにしえ)より学問に秀でており都の役職を歴代されたと聞きます。
されどあるとき一族ことごとく左遷され四散しました。
その中に尾張の国で土着した一族がおり、私はそこに仕えておったのです。
・・・・藤原家は言わば都の利権争いに敗れた訳でございます。
都とはそういう所でございます。もちろん尾張という地も同じことでありました。
皆、全てを疑い、言葉に含みを付け、自身を守る事に手いっぱいの様子。
私はその様な気風に耐えられず世捨て人になり、この地に戻ってまいりました。
先日あなたがお見えになった時、その情景が頭に浮かびお断りさせたいただいたのです。
・・・・・されど、よく考えてみれば、、、
一門の者が困っているというのに、、、新しき命が失われるというに、、、、、
私は都の者と同じ穴になり下がる所でございました。
五郎太夫殿!決心をいたしました。この二俣弾正出来うる限り力をお貸しいたしましょうぞ!。」
五郎太夫はそんな答えをもらえるとは思っていなかったので、驚くというより呆気にとられてしまった。
「ま、誠でございますか、そ、それはありがたき事。」
二人は嬉しくも手を重ね合わせたが、弾正は苦言を呈した。
彼が言うには、男であっても女であっても生きながらえる事は簡単であるが
やはり父である八幡太郎義家の承諾は得ないと駄目だという。
これなくしては二俣一族の後への遺恨になると彼は断言した。
そしてそれが険しい道のりではあることも。
その為にまず、しきたりなど都の理を知らなければならず
娘と生まれてくる子を弾正に預けてほしいというのだ。
娘も納得の上、それにこの地は故里であるので五郎太夫は快く承諾し見附へと帰っていった。
その日から半年以上たった頃。
二俣の里に藤花の香りに包まれながら1人の男の子が舞い降りた。

※歴史認証はされておらず、あくまで個人の見解です。
五郎太夫は再び二俣に戻る事になった。今度は娘も同行している。
なじみの大谷乃内が数日前に訪れて、弾正から今一度会いたいとの言伝だとか
自分の願いを断っておいて今更何用かとは思ったが、無下にも出来ず今ここにいる。
そんな思いを抱きながら弾正の家に着いたとき、彼は何事かと思った。
鍬や篩(ふるい)の農具はしっかりと整頓してあり、藁ぶきの縁はしっかりと切りそろえられている。
庭においても隅に至るまで手入れが施されていた。
以前来た時とは見違えるほどの変貌ぶりに一瞬言葉を失った。
さらに弾正に呼ばれて家の中に入ればどうだろう。
そこには、ここらの地域ではお目にかかれない織物の正装に身を包んだ彼がいた。
あの、泥だらけで顔の半分を頭巾で覆っていた老人とは思えないほどである。
今でいうギャップ萌えという事になろうか、五郎太夫は大いに驚いた。
そしてこれが京に近き”もののふ”なのだと改めて思った。
「な、何事でございますか?これは。」
「よく来られました五郎太夫殿とその娘方。ささお座りなされ。」
すこし張ったお腹をいたわり、座る二人を見て弾正は心の内を語り始めた。
「私が仕えてきた菅原家というのは、高貴な家でございました。
古(いにしえ)より学問に秀でており都の役職を歴代されたと聞きます。
されどあるとき一族ことごとく左遷され四散しました。
その中に尾張の国で土着した一族がおり、私はそこに仕えておったのです。
・・・・藤原家は言わば都の利権争いに敗れた訳でございます。
都とはそういう所でございます。もちろん尾張という地も同じことでありました。
皆、全てを疑い、言葉に含みを付け、自身を守る事に手いっぱいの様子。
私はその様な気風に耐えられず世捨て人になり、この地に戻ってまいりました。
先日あなたがお見えになった時、その情景が頭に浮かびお断りさせたいただいたのです。
・・・・・されど、よく考えてみれば、、、
一門の者が困っているというのに、、、新しき命が失われるというに、、、、、
私は都の者と同じ穴になり下がる所でございました。
五郎太夫殿!決心をいたしました。この二俣弾正出来うる限り力をお貸しいたしましょうぞ!。」
五郎太夫はそんな答えをもらえるとは思っていなかったので、驚くというより呆気にとられてしまった。
「ま、誠でございますか、そ、それはありがたき事。」
二人は嬉しくも手を重ね合わせたが、弾正は苦言を呈した。
彼が言うには、男であっても女であっても生きながらえる事は簡単であるが
やはり父である八幡太郎義家の承諾は得ないと駄目だという。
これなくしては二俣一族の後への遺恨になると彼は断言した。
そしてそれが険しい道のりではあることも。
その為にまず、しきたりなど都の理を知らなければならず
娘と生まれてくる子を弾正に預けてほしいというのだ。
娘も納得の上、それにこの地は故里であるので五郎太夫は快く承諾し見附へと帰っていった。
その日から半年以上たった頃。
二俣の里に藤花の香りに包まれながら1人の男の子が舞い降りた。
