2016年10月26日10:10
<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第二章vol.6【二岐二俣また明日】≫
カテゴリー │歴史が動いてヒストリ庵
※これはあまりにもフィクションです
※歴史認証はされておらず、あくまで個人の見解です。
相良の者と五郎太夫の娘子、彼らは義家に謁見するため宿舎にいた。
無論娘子に宿った命を認めてもらうように懇願しに来たわけだが
日が頭上に来る頃には出立するという命令が下されたため
兵の者があわただしく準備におわれていた。
ドタドタと床を走り回る音、それにより家中の埃が舞散る様。
あぁ、こんな状況では会ってくれそうもないと半ば諦めていたが
お付きの者が来て、娘子に礼が言いたいそうで謁見を許された。
義家もバタバタとしていたが、娘子が来るや上座にどっしりと座る。
「おぉ、そち、長き事世話になった。おかげでとても良き時間を過ごせた。
もうすぐここを出なくてはならず、一言礼をとおもったのだ。」
娘子はしとやかにお辞儀をした。
「もったいなきお言葉にございます。」
上機嫌な義家ではあったが
ふと娘子と同行している男が気になり尋ねてみた。
「さて、娘子の隣の男よ、何者ぞ。」
「恐れながら、われ藤原南朝の流れをくむ工藤家の末裔
これより南の相良を拝領された相良太郎光頼と申す者。」
義家は根っからの武功人であり、京中でよく騒いでいる家柄云々の話が嫌いであった。
故にこの娘子に恋をしたという事ではあろうが、目前に居る男の言い様が
鼻につき眉がピクリと動く。
「して、何用ぞ?」
「重ねて、八幡太郎様にお願いしたき事あり。」
「それはなんぞ?」
「隣にいるは我が子であり、この娘子にややこがおります。
これに至るは八幡太郎様との子と存じます。」
それを聞いた義家は少し嬉しかった。
好いた女子との間の子、嬉しくないはずはない。
されど、弊害がいくつもある。
自分にはまだ子はいない。認めれば第一子という事になる。
それにこの男、これを機に我が家の名を借りる。
そんな気がしてならなかった。
ここは現世の習いにて厳しくも状況を跳ね除けなくてはならなかった。
「捨てよ。」
「!?なんと?捨てよと申されるか?それはあまりに酷な事。」
「ならぬ!ならぬ!生まれる時、その子は捨てよ!」
義家は断固として認めなかった。
娘子は悟っていたのか、涙をぐっとこらえている様だ。
「すまぬ娘子よ、この子は習いにて認められぬのじゃ。
せめてもの報い、これで緒(へそ)を斬り、捨ててやってくれ。」
そういって娘子に源伝来の短刀を手渡した。
「儂はもう立たねばならぬ、この想い忘れぬでの。」
そういって義家は家の奥へとはけていった。
娘子はぎゅっと短刀を握りしめ震えていた。
その横で相良の者は、また別の感情で打ち震えていたのだった。

※歴史認証はされておらず、あくまで個人の見解です。
相良の者と五郎太夫の娘子、彼らは義家に謁見するため宿舎にいた。
無論娘子に宿った命を認めてもらうように懇願しに来たわけだが
日が頭上に来る頃には出立するという命令が下されたため
兵の者があわただしく準備におわれていた。
ドタドタと床を走り回る音、それにより家中の埃が舞散る様。
あぁ、こんな状況では会ってくれそうもないと半ば諦めていたが
お付きの者が来て、娘子に礼が言いたいそうで謁見を許された。
義家もバタバタとしていたが、娘子が来るや上座にどっしりと座る。
「おぉ、そち、長き事世話になった。おかげでとても良き時間を過ごせた。
もうすぐここを出なくてはならず、一言礼をとおもったのだ。」
娘子はしとやかにお辞儀をした。
「もったいなきお言葉にございます。」
上機嫌な義家ではあったが
ふと娘子と同行している男が気になり尋ねてみた。
「さて、娘子の隣の男よ、何者ぞ。」
「恐れながら、われ藤原南朝の流れをくむ工藤家の末裔
これより南の相良を拝領された相良太郎光頼と申す者。」
義家は根っからの武功人であり、京中でよく騒いでいる家柄云々の話が嫌いであった。
故にこの娘子に恋をしたという事ではあろうが、目前に居る男の言い様が
鼻につき眉がピクリと動く。
「して、何用ぞ?」
「重ねて、八幡太郎様にお願いしたき事あり。」
「それはなんぞ?」
「隣にいるは我が子であり、この娘子にややこがおります。
これに至るは八幡太郎様との子と存じます。」
それを聞いた義家は少し嬉しかった。
好いた女子との間の子、嬉しくないはずはない。
されど、弊害がいくつもある。
自分にはまだ子はいない。認めれば第一子という事になる。
それにこの男、これを機に我が家の名を借りる。
そんな気がしてならなかった。
ここは現世の習いにて厳しくも状況を跳ね除けなくてはならなかった。
「捨てよ。」
「!?なんと?捨てよと申されるか?それはあまりに酷な事。」
「ならぬ!ならぬ!生まれる時、その子は捨てよ!」
義家は断固として認めなかった。
娘子は悟っていたのか、涙をぐっとこらえている様だ。
「すまぬ娘子よ、この子は習いにて認められぬのじゃ。
せめてもの報い、これで緒(へそ)を斬り、捨ててやってくれ。」
そういって娘子に源伝来の短刀を手渡した。
「儂はもう立たねばならぬ、この想い忘れぬでの。」
そういって義家は家の奥へとはけていった。
娘子はぎゅっと短刀を握りしめ震えていた。
その横で相良の者は、また別の感情で打ち震えていたのだった。
