<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第六章【エンシュー今川焼】vol.9

ケヴィン

2018年03月16日 11:01

勝間田氏(かつまた)。
横地氏(よこち)の庶家として誕生したその家は、古くは鎌倉時代にさかのぼる。
本家でもある横地氏とは仲がよくお互いを盛り立てながら今までを生き抜いてきた。
横地氏の影響もあってか、自分達の野望などは考える事はせず幕府に従い代々その地を守ってきたのだ。
そのおかげとも言うべきか、役職は将軍側近的な仕事を多く受け持っていた。
我らが将軍家及びこの日の本を守っている。そういう自負が勝間田にはあった。
そういった正義感的思考が、今は今川に向いている。
しかし、気持ちだけでは今の世は渡ってはいけない。
先の応仁の乱の折、勝間田氏も家が二分した。さらに属していたのは実質敗者の西軍である。
すでに先より兵が疲弊していた中、守護職の斯波氏からの命で正義感の名の元動いている戦いなのだ。
一方今川はこの時を占ったかのように兵力を集結させ温存していた。
見附に大勝した義忠(よしただ)は朝比奈 泰煕(あさひな やすひろ)の軍勢を見附に残し後詰とし、
掛川城の改築も下知する余裕っぷりだ。
故に勝間田氏は見附にて大敗を喫した訳だ。
ただそれでも、地の利のある勝間田城に行けばいちるの望みがあるとして
見附をすて慣れ親しむ地に向かっている。
足がある者、体力がある者その者達は必死に勝間田城を目指す。
されど、見附の戦いにて不書した者達は段々とその群衆から離れていく。
見附から牧之原まではそれなりの距離があり、先頭が勝間田城に着くころには、隊列は一本の糸の様に
伸びきっていた。最後尾は勿論負傷者たちである。
今川義忠(いまがわよしただ)は、その者達も容赦せず全てをなぎ倒していった。
向かってくるものは、なぎ倒すのが上等のこの時代。仕方がない事ではあるが
負傷した者達は、勝間田に着く者達に望みを託し今川勢に立ち向かい果てていった。
気づけば今川勢が通った後に屍の道が延々と続いている。
勝間田城に到着した者は到着しただけであり、疲労困憊である。
さらに見附でかたを付けようとしていたため、貯蔵庫には備蓄の米はそれほど残ってはいない。
100%整っていない、いや不十分でしかないと言った方が適当であるこの状況で今川勢を待ち構える事は無謀にも近い。
彼らは、慣れ親しんだこの地で死にたいと思ったのかもしれない。
さらに言うならば、ここで出来るだけ時間を稼ぎ横地氏に休息と準備の時間を与える為、
捨て駒になろうとしているのかもしれない。
勝間田修理亮 ( かつまたしゅりのすけ )が本丸から下を伺うと土煙を巻き上げながら今川勢がこちらに
向かってくるのがわかった。
「皆の者!死出の旅に向かおうぞ!」



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