※これはあまりにもフィクションです
※歴史認証はされておらず、あくまで個人の見解です。
「降伏なされませ。」
今川 範国から出た意外な提案。
「!?今なんと仰せになった?」
信じられぬ井伊行直は再度聞き返す。
「高師泰率いる兵は鎌倉様の下知により、関東平定を目指し今朝方転進いたしました。
後の処理は私、今川上総介に一任されました。」
「というわけで、ここに参った次第ですが、、、、先程も申しましたが、井伊殿、降参なされませ。
もしくは、一戦交えて無駄死にいたしますか。」
直行は思う気持ちを噛みしめながら、膝を落とした。肩が震えている。
「・・・・・相分かった。されど頼みごとが1つ。わしの命はくれてやるが
家臣や他の者には手出しはせんでくれ。」
今川 範国は少しニヤリとしてみせた。その笑みが何を意味するのかわからなかったが
続けてこう言った。
「もちろん、そのように致しましょう。・・・・・そしてあなたも。
それには条件がありますが、井伊殿以下ここの地の者は今川の傘下に入ってもらいます。」
彼は直行の耳元に顔を近づけると、さらに続けてこう言う。
「これはお願いではありません、命令です。」
範国は、またニヤリと笑う。
直行にはピントがぼけてしっかりとは把握できなかったが、その表情にゾクッとする寒さを覚えた。
直行は自分の無力を悔しながら今川 範国の提案を受諾した。いや、する他なかった。
こうしてエンシューでの南朝側攻勢はふっと風に流されたのである。
しかし、全国各地では南朝と北朝の戦いは続いていった。
足利勢率いる北朝内部で足利一族の利権の奪い合いで内紛が起きたりもする。
政は混乱を極め、離合集散その度に弱い者は淘汰されていく。
思えばこの南北朝の争いで激戦区になったのは、京都の周辺の近畿、鎌倉周辺の東国、九州、
そして、エンシュー一帯がそれである。
井伊一族はというと、今川傘下で各地を転戦した。もちろん他のエンシュー武家達も同様である。
今川家が狙っていたのは駿河及び遠州の支配であり、その基盤として井伊の様な国人達を
手なずける事にあった様に思う。
こうした一連の争いは、南北朝合一されるまでの56年間続いた。
朝廷が1つにまとまった事で一応の決着を見たが、歴史は川の流れ、疑念、怨念、
そういった物を抱えながら次のステージへ移行していくのであった。
~第四章 終~
<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第四章【東西南ボクイイね!】
いかがだったでしょうか?
次週はお休み。
次回からは
<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第五章【エンシュート!スルガ】
をお送りいたします。