<歴史が動いてヒストリ庵~エンシューの衆ら~3> 第四章vol.13【東西南ボクイイね!】

ケヴィン

2017年06月16日 10:27

※これはあまりにもフィクションです   
※歴史認証はされておらず、あくまで個人の見解です。
夜になった大平城で、警備以外の兵を全て集めた井伊行直は苦渋の決断を下した。
「我々はもう後がない。だが我々の希望は宗良親王様に預かってもらう。
親王様に北の曲輪より脱出していただく、追撃を阻止せんが為、皆には数日、、、
あと数日だけ踏ん張ってもらいたい。」
「すちに思ひさためぬ八橋のくもてに身をもなけく比かな
皆すまぬ、ここを去ることを許してほしい。
皆の想いを胸に、必ず南朝再興を成し再びこの地に戻ってこようぞ。」
宗良親王は震える声と共に涙した。
兵士達はそれをおもんばかり、改めて内なる闘志を燃やした。
その日の深夜、宗良親王と数名のお供は敵にさとられる事なく大平城を出た。
彼はこの後、三河足助氏の支援を断り信濃の高坂氏のもとに行く事になる。
そこから常に切望した南朝再興の夢を実現しようと奔走していく。
北朝方にゲリラ戦を幾度もしかけ、吉野との連携と南朝方の勢力拡大を目指した。
一時は鎌倉を占拠し征夷大将軍に任ぜられたこともあるが、掌握できず
結局南朝再興の夢は叶わなかった。晩年は出家し和歌をたしなむ余生を送り
大平を出てから45年が過ぎた頃、この世をさる。
実は宗良親王はゲリラ戦を行っている時期、数回エンシューに足を踏み入れている。
その中で一度、井伊谷を再訪していたりもする。
その時生まれた子が、尹良親王(ゆきよししんのう)という。
尹良親王ついては謎が多く伝説化しているが、それはまた別のお話である。
さて、話を戻して大平城内はというと。
皆、宗良親王はすでに城を出られた事を知っていた。
明朝の攻防では、真に死ぬ気と目が血走り眠る者はほとんどいなかった。
井伊行直も同様である。死ぬ気なのである。
そういう大平城内の想いをのせてか徐々に日が昇って行った。
しかし、昨日まで激しさが嘘のように敵が襲ってこない。
不思議に思っていると表門から伝令がやって来た。
「門前に1人の男が井伊様への面会を願い出ております。」
「誰と言っておる。」
「今川上総介様!」
今川 範国が門前に来ている?
なぜ?何か裏があるのか?井伊行直はどうにも解せなかった。
ただ、来たからには何か理由があるはず。
意に添わぬことであれば、追い返すか切り捨てればよいと行直は考えた。
こうして今川 範国は本曲輪、井伊行直の前に通された。
「今川の御曹司が何の御用ですかな?」
「高師泰率いる兵は転進し関東へ向かいました。ここにいるのは我が今川の兵のみ。
降伏なされませ。もしくは一戦交えますか?」
今川 範国の提案に行直は唖然とした。



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