夏に魅せられて

ケヴィン

2012年07月05日 17:22

辰天(たつのあま)村
かの地は豊富な水と山に囲まれた山里
時間は静かに流れ大都会とは真逆のベクトルを進む地。
とはいっても車で30分走れば大概の街には辿るので
住民はさしたる不便は感じていない。
そんな穏やかな村落に突如劇震がはしる。
ある事件が起こったのだ。
住民には晴天のヘキレキ、まさしく劇中にいる感覚だったであろう。

二日後、東京では、、、、

照り付ける太陽、今年の夏は例年よりも熱くなる、
そう予報では言っていた。

「、、、、、ちっ、、それにしても熱いわっ、、。」
「上杉さーん。」
屋上で太陽を睨みつけている上杉に、
部下の太田が駆け寄りながら呼びかける。
「はぁ~?」
「・・・?何やってるんですか?」
「見てわかんねーか!?太陽と戦ってんじゃねーか!」
そういう上杉の顔面は大粒の汗にまみれ、シャツもぐっしょりである。
上杉の周りだけ湯気が発生しているかのようで
まさしく野外サウナに違いない。
「・・・・・・わかりませんよ。」
太田は上杉の茶目っ気ぶりをいとも簡単にあしらった。
いつもの事である。
彼の名は太田道成(おおたみちなり)という。
歳は20代の中盤と言ったところであろうか。
2年前に刑事課に配属されここに来た。
才色兼備とまではいかないが、それなりに男まえである。
もう一人の男は、上杉憲且(うえすぎのりかつ)という。
歳は40代の働き盛り、いかにも現場上がりの無骨な刑事である。
2年前刑事課へ配属になった時、その上司が上杉という訳だ。
初めの頃太田も上杉の茶目っ気に乗っていたが、ほどなくして止めた。
キリが無いから、そう思うとさらに当たりが強くなっていった。
そんな仲でも、なんだかんだコンビとして成り立っている。
「お前、、、あれだ!今年は、あれ、、、そう!熱は夏い!なんてことは
ギャグでもいえないぜ。」
「・・・・そうですね。それよりも聞いて下さい。」
太田の返答を聞いて、上司と部下の垣根をほどき和みを与えてやろうと
したのがわからんのか、といいたげに上杉の表情は釈然としないものに変わった。
もちろん、いつもの事である。
「ふんっ、何をだ。」
「2日前に辰天村で起きた事件の特別捜査本部がたちあがるようです。
私たち二人に出向命令が下されました。」
「・・・・いきたかぁね~よ。そんなもん。」
「命令ですよ!また違反したら今度は懲戒免職ですよ。」
「・・・・しるかよ。。そんなもん。」
「・・・上杉さん、たしか辰天村って言ったら毎年最高気温を記録している土地です。」
「・・・だからなんだよ。」
「最強の太陽に背をむけちゃっていいんですか?」
「うーーー。何時出発だ?」
「・・・・今です。」
「なんだと!?」
いわゆるお似合いのコンビである。
そうして二人は辰天(たつのあま)村に向かった。

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